悔しいけれど、妊活始めます


「若いからすぐにできるよ」
「できれば30歳までに一人は生んでおけるといいね」

3年前からそう言われてきた。
自分もそうなると信じてきた。
が、どうだ。30歳目前にして、私の腹は別の生命体を宿す気配がない。


自由業という不安定な職についているがゆえ、避妊していた期間はある。
週に1回は午前様で、千鳥足を絡ませて道端で転ぶような日もある。
妊活優等生ではない。
しかし、それにしたってできなさすぎではないか。

夫との中は良い。1週間空いたことはない。
睡眠時間はめちゃくちゃでひどい出来ではあるが、基礎体温もつけている。
「そろそろだから……ね?」そんな会話もしているのだ。


大学の同級生、仕事仲間、既婚のアラサー女が集まれば、自然とその話が出る。
5人いれば3人が言う「できない」。


「なかなかできないんだよね」
「できにくい体質みたいなんだよね」

おずおずと誰かが切り出す。

「かなりヤリまくらないとできないらしい」
「ストレスがあるとよくないらしい」

それくらいの話は出る。

「私、漢方薬を飲み始めたんだよね」
「針治療がいいらしい」

そんな噂はできる。

でも「本格的に不妊治療始めたんだ」とは誰もいえない。
不妊」という単語がこわい。
運命を受け入れるみたいだと思う。大げさだけど。

でも、そろそろ本気で考えなくちゃいけないのかもしれない。
取引先の同い年の人が言った。

「今年こそ、本気なの。もし年内にできなかったら……」

できなかったらなんなのだろう。
その後も日常は続いていくだけだと思うけど。
でも、一度はきちんと向き合ってみてもいいのかもしれないと思った。

 

思い立ったが吉日、その日、とりあえず病院へ行ってみることにした。

無駄足なら無駄足でもいいじゃない。